« 〈第36回〉ヴォロンテにやっぱり喜劇は似合わない?-『気ままな情事』 | トップページ | 〈第38回〉「死」の映画-ヴォロンテ出演作品の主要テーマ »

2012年5月29日 (火)

〈第37回〉“L'ultimo treno della notte” 夜の最終列車-2012年4月2日、日本でのDVD『暴行列車』発売をうけて

『暴行列車』


Lultimo_treno_della_notte_000

原題 “L'ultimo treno della notte

監督 アルド・ラード
脚本  アルド・ラード、レナート・イッゾ
音楽 エンニオ・モリコーネ
公開年 1975年

出演者 フラヴィオ・ブッチ(ブラッキー)
       マーチャ・メリル(乗客の女)
       ジャンフランコ・デ・グラッシ(カーリー)
       エンリコ・マリア・サレルノ(ジューリオ・ストラーディ)
          マリーナ・ベルティ(ラウラ・ストラーディ)
      フランコ・ファブリーツィ(乗客の男) etc.

DVD (in Italia)“L'ultimo treno della notte” Cecchi Gori Home Video



 この作品を紹介するに当たって、先ず私のスタンスを明らかにしておきたいと思います。

 私はホラー系のファンではなく、あくまでもエンリコ・マリア・サレルノのファンの一人として、
日本非公開作品であった“L'ultimo treno della notte”をすでに観ていました。

  よって、このブログでは、DVD販売にあたって付けられた邦題『暴行列車』としてでは
なく、サレルノが出演した“L'ultimo treno della notte”(イタリアで公開されたヴァージョン
で)として紹介したいと思います。

 ☆ ★ ☆ ★  ☆


Lultimo_treno_della_notte_01_2

↑ ミュンヘンでドイツ語を勉強していたリーザ・ストラーディが、いとこのマーガレットと
     ともにクリスマスをイタリア北部のヴェローナの自宅で過ごすために列車で帰ってきます。
     左がリーザ。右がマーガレット。



Lultimo_treno_della_notte_02

↑  ミュンヘン駅で無賃乗車する前にも、すでに数々の犯罪行為を繰り返していた
     二人の男。
     左がブラッキー。右がカーリー。



Lultimo_treno_della_notte_03   Lultimo_treno_della_notte_04   

(↑左)
    ミュンヘン発の列車には、お上品な女性も乗車していました。
    ところが、この女がとんでもない食わせモノ。

(右)
    昼の1時の列車に乗った二人は、翌朝7時にヴェローナに到着すると、ミュンヘンの
   親戚から電話連絡を受けたストラーディ夫妻は、リーザが乗るバイクを見に出かけ
   ます。

    リーザの父親ジューリオ・ストラーディは外科医。
    クリスマス前日にも手術にあたり、容態がよくない患者のために帰宅が遅くなって、
    パーティの準備に追われる妻から怒られる始末。



Lultimo_treno_della_notte_05   Lultimo_treno_della_notte_06

(↑左)
  列車の連結部でハーモニカを吹くカーリー。
  カーリーとブラッキーは、リーザとマーガレットのおかげで検札から逃げおおせた後も、
  無賃乗車を続けます。

(右)
  列車がオーストリアに入った夜中、係官が爆発物を捜査するために大挙して
  乗り込んできます。
  その間に、リーザとマーガレットはヴェローナに電話をしようと、一旦ホームに降ります。



Lultimo_treno_della_notte_07   Lultimo_treno_della_notte_08

(↑左)
  列車を乗り換え、しつこく付きまとうブラッキーらと完全に離れることができたと思った
  のもつかの間、リーザとマーガレットのブースには、あの二人の男たちに食わせモノの
  女まで入り込んできて、醜態を演じるのでした。

(右)
  カーリーはこっそりとヤクを打ち…

Lultimo_treno_della_notte_09  Lultimo_treno_della_notte_10

(↑左)
  リーザたちのブースをのぞいた乗客の男が目撃したのは…

(右)
  ナイフを取り出したブラッキーに協力的な食わせモノの女。



Lultimo_treno_della_notte_11   Lultimo_treno_della_notte_12

(↑左)
  その頃、リーザの両親はパーティの真っ最中でした。

(右)
  必死の思いでブースから逃げ出し、トイレに隠れたマーガレットでしたが、外からは
  ブラッキーらが力でドアを突破しようとしていて…


Lultimo_treno_della_notte_13   Lultimo_treno_della_notte_14

(↑左)
  ブラッキーらは犯行を隠滅しようと、猛スピードで走行する列車の窓からリーザを
  投げ落とし…

(右)
  間もなく到着する列車を駅で首を長くして待つリーザの両親。
  しかし列車が到着しても、リーザの姿はなく…

   これ以後のリーザの父親ジューリオの繊細な心理描写は、
 まさにサレルノであればこそ!


Lultimo_treno_della_notte_15

↑  不審に思いながらも、負傷したという食わせモノの女の治療するために、
     ブラッキーらとともに自宅に連れてきたジューリオは、カーラジオで列車内での
  殺人事件のニュースを聞き、女を締め上げてリーザを殺害した犯人を吐かせます。

     ニュースを知って駆けつけてきた妻に、ジューリオは二人の男の居場所を確認します。


Lultimo_treno_della_notte_16

↑  ジューリオが垣間見たものは…


Lultimo_treno_della_notte_17

↑  カーリーを惨殺する直前に、逃げるブラッキーの姿を見たジューリオは、
   猟銃とガンベルトを携えて後を追います。

    復讐の鬼と化したジューリオは、クリスマスパーティーの場で語っていた
   「ある種の若者たち」を力で排除するのでした。

    それはそうと、あの食わせモノの女は?

    ブラッキーにとどめを刺したジューリオが、不信感に満ちたまなざしを女に向けて
    FINEを迎えます。

    被害者面をして、ジューリオの復讐の炎を二人の男だけに向け、罪からも逃れる-
    この女を登場させている点が、完全なハッピーエンドで終わらない、いかにも
   イタリア映画らしいところでしょう。

 ☆ ★ ☆ ★ ☆

 “L'ultimo treno della notte”は、イタリアでも公開当時からセンセーションを巻き起こした
18歳以下の視聴が禁じられているホラー系スリラー作品です。

 えげつない暴力、セックス、麻薬がこれ見よがしに映し出されるがゆえに、各国で検閲に
引っかかり、一部シーンがカットされたり18禁でも公開されたのはいい方で、イギリスからは
当時、完全にシャットアウトされたという経緯があります。
 もちろん、1975年当時の日本でも公開されませんでした。

 しかし現在、“L'ultimo treno della notte”は、ホラー/スリラー作品の優れた作品の一つと
いう高い再評価を受けています。

 それにしても、こんなえげつないホラー系作品に、映画/テレビ/舞台出演と休む暇なく
活躍し、常に時代の最先端を行くジャンルを成功させ、イタリア演劇の「モダニズムの開祖」
といわれたサレルノが、どうしてもう一人の主演として出演したんでしょうね?

 
 かねてから「選択」の重要性を語っていたサレルノの決心の背景として考えられるのは、
この“L'ultimo treno della notte”に出てくる麻薬常習者はひとごとではなく、当時未成年
だった四男の問題であったことが、何よりも挙げられるでしょう。

 1960年代からドラッグの実態を告発したドキュメンタリー映画のナレーターを進んで
務めてきたサレルノでしたので、四男の問題はまさに親の心子知らずの事件でした。

 なお、サレルノの四男のその後ですが、専門の治療施設で克服した後、家族のもとに
戻り、独り立ちに成功しています。

“L'ultimo treno della notte”前後の主なサレルノ主演作品は…


1973_bisturi_enrico_m_salerno   1978_enrico_m_salerno_amori_miei

(左) “Bisturi, la mafia bianca”1973年
      イタリア版『白い巨塔』とでもいうべき一作。
          1973年のカンヌ国際映画祭パルムドールノミネート作品。

(右) “Amori miei”1978年
       一人の女性に夫が二人? 
         『黒い警察』のステーノ(ステーファノ・ヴァンズィーナ)監督の爽快な喜劇作品。

 音楽を担当しているのは、エンニオ・モリコーネ。

 私が確認したところでは、クレジット字幕が、イタリア語ヴァージョンでは独自の
エンディングテーマなのですが、英語ヴァージョンではオープニングテーマが
エンディングとしても使われています。

 カーリーが吹いているハーモニカのメロディは、セルジオ・レオーネ監督『ウェスタン』で
使われたメロディなんですね。

 ブラッキー役のフラヴィオ・ブッチは、1972年のエリオ・ペトリ監督『労働者階級は天国に
入る』で、ヴォロンテ扮するルルの同僚労働者(名前は付いていない)として出演しています。

写真↓ 『労働者階級は天国に入る』より   右側がフラヴィオ・ブッチ。

Flavio_bucci_la_classe_operaia


 ☆ ★ ☆ ★ ☆

 ミュンヘンを出発して昼間の列車の旅は、いろんな表情の乗客がいて楽しく、
次々と移りゆく車窓は思わず見入ってしまうほどです。

 イタリア北部の霧に包まれた駅で両親がリーザを待つシーンは、格別の雰囲気…。

 なのに、作品のなかほどは二度と見たくないような醜悪なシーンの連続です。

 このブログでは、意図的にそのようなシーンを外してお届けしました。

 私は…、
 正直なところ、まともに観たのはサレルノが登場するシーンだけ。

 それにしても、サレルノも罪作りな作品に出演したものですね。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆

« 〈第36回〉ヴォロンテにやっぱり喜劇は似合わない?-『気ままな情事』 | トップページ | 〈第38回〉「死」の映画-ヴォロンテ出演作品の主要テーマ »